「本の寺子屋」にて

縁があって某所での「本の寺子屋」でお話しする機会をえた。
呼んでくれた方々、準備してくれた方々に感謝。



【xxx】さんの本の寺子屋(東京・【xxx】社) 2008年12月10日(水)
ノーベル賞からふりかえる20世紀の科学」


はじめに
 ここにいたるまでの偶然。科学と社会、【xxx】、【xxx】さん、【xxx】さん。


1. 物理学の見方 「CP対称性の破れ」にむけて

○ わたしたちの体は、なにからできているのか。
 細胞 → 分子 → 原子 → 陽子、中性子(以上クォーク)、電子、ニュートリノ(中性微子)。

○ わたしたちの体は、どこから来たのか。
 物質の根本を追究すると宇宙論へ。
 時間と空間が無から生まれた。インフレーション、ビッグバン、恒星での核融合超新星爆発
 物質が生まれるときには、反物質も生まれる。しかしこの宇宙は物質ばかり。

○ 数学はどのように使えるのか。
 数学と自然界の結びつき。
 ディラックの方程式(1930)。E2=(pc)2+(mc2)2  ⇒  E=±√{(pc)2+(mc2)2}  陽電子の予測
 南部陽一郎さん「自発的対称性の破れ」(対称性いろいろ。鏡映対称、点対称、回転対称、時間の対称)
 小林誠さん・益川敏英さん、6つのクォークモデルによって「CP対称性の破れ」を説明。物質と反物質の量に差。
 Charge(電荷、物質/反物質での対称)、Parity(空間での対称)で、実験結果が保存しないことの説明。


2. ノーベル賞の功罪

○ ノーベル賞はなにがすごいのか。
・ 世界で年10人ほど。たたえるいい機会。
・ 19世紀末のノーベルさんの趣味。物理学賞、化学賞、生理学・医学賞。個人授賞、高齢化。

○ ノーベル賞はめざすべきものなのか。
 「科学技術基本計画」にも、「50年で30人」。20世紀の研究競争。個人主義
 授賞者数や頻度を増やす、団体への授賞、ノーベルなんでも賞、ノーベルではない賞、・・・。


3. 社会のなかの科学

○ お父さんやお母さんが子どもだったころになかったものは。
 日常生活のなかにも、地球環境にも、科学技術の成果があふれている。
 とはいえ、科学は人間が使うもの。
 医療? 便利? 人体改造? 「どの程度」という問い。

○ 科学研究も社会のしくみから独立なのか。
 19世紀に大学を中心に制度化。そして産業、軍事(冷戦期の研究予算)、・・・。
 物理学の拠点の変化。ドイツ語圏中央ヨーロッパから、アメリカ(と日本)。
 税金だけではないお金の流れを。
 課題の提示も重要。生態学を例にとると、資源管理、核汚染の分析、自然保護、生物多様性と課題は変わる。

○ 科学コミュニケーションはなにをめざすのか。
・ 科学は人間の感覚とかけはなれがち。太陽中心説、・・・。
・ 変化する時代のなかで、立ち止まって考えるための科学コミュニケーション。脳、温暖化、リスク、・・・。
・ 生業でない研究のあり方も。週末研究者。「最高の道楽」(米本昌平


おわりに
 科学とはなにか。
 反証可能性ポパー)が有力だが、更新されつづける集合知の営みであること。基準自体も変化しうる。
 そこに参加するのは科学の専門家だけではない。
 有名人の知だけではなく、集合知をどのように表現できるか。


おすすめの本いくつか
馬場錬成(2002)『ノーベル賞の100年 自然科学三賞でたどる科学史中央公論新社中公新書).
ビル・ブライソン(2006, 2003)『人類が知っていることすべての短い歴史』日本放送出版協会.
村上陽一郎(2008)『科学・技術の二〇〇年をたどりなおす』NTT出版(やりなおしサイエンス講座1).
南部陽一郎(1998, 1981)『クォーク 第2版 素粒子物理はどこまで進んできたか』講談社ブルーバックス).
三田一郎(2001)『CP非保存と時間反転 失われた反世界』(岩波講座 物理の世界)岩波書店.
佐藤文隆(1999)『物理学の世紀 アインシュタインの夢は報われるか』集英社集英社新書).
スティーヴン・ワインバーグ(2008, 1977)『宇宙創成はじめの3分間』筑摩書房ちくま学芸文庫).


裏には以下を印刷。
http://mainichi.jp/select/wadai/nobel/news/20081012ddm016040045000c.html
http://www.kek.jp/newskek/2003/mayjun/km.html